既述の通り「ビール純令法」で「麦芽、ホップ、水、酵母のみを使ったもの」だけをビールとして認めるという「縛り」があるにも関わらず、ドイツには様々な種類のビールが存在します。これは副原料の使用が許されるほかの国とは単純比較できない「凄さ」だと思います。国内に1200以上もの醸造所がある事とそれぞれの地域で各々異なったビール製造が確立されたことが背景にあります。
中には日本で一般的に飲むビールとは全く異なるものもあります。でも「こんなのビールじゃない!」なんて言わないで下さいね!例えばお寿司のネタにはマグロも赤身や大トロがあり、ウニやイクラ、エンガワやサバなどいろいろありますよね?でも、今までマグロの赤身しか食べた事ない外国人の方が、ウニやネギトロを食べて「こんなのお寿司じゃない!」って言ったらおかしいですよね?それと同じように、世界にはいろんなビールの種類があるんです。もちろんドイツにもたくさん種類があります。
種類ごとの特徴
まず、ビールには発酵方法に大きく2種類あることを知っておく必要があります。
上面発酵酵母を使って高温(約15〜25度)で発酵させ、発酵が終わると上面に浮き上がるのが「上面発酵(エール)」。一般的にフルーティーな香りを作りやすいと言われています。一方下面発酵酵母を使って低温(約5〜9度)で発酵させ、低温で熟成させるのが「下面発酵(ラガー)」。発酵後の酵母は底に沈みます。
| 上面発酵(エール) | 下面発酵(ラガー) | |
|---|---|---|
| ヴァイツェン(ヴァイス) | ピルス(ピルスナー) | ボック(シュタルク) |
| アルト | シュヴァルツ | メルツェン |
| ケルシュ | デュンケル | ラオホ |
ヴァイツェン(ヴァイス)
私の一番大好きなビール(笑)。小麦(=Weizen ヴァイツェン)の麦芽を約50%使い、白(=Weiss ヴァイス)っぽく濁った、ミュンヘンを中心としたバイエルン地方で育まれた上面発酵ビール。どことなくバナナっぽいフルーティーな香りが特徴。ローストした麦芽を使って濃淡色で苦味のある「デュンケルヴァイツェン(Dunkel−Weizen)」、アルコール度数が高い「ヴァイツェンボック(Weizenbock)という派生スタイルもあります(「ボック」「デュンケル」については後述)。
酵母入り(Hefeと書かれてます)のを瓶で飲む場合は底に沈殿した酵母も注いで飲んで下さいね!味に深みが出ますし、健康にもよいかも?
このヴァイツェン、「いわゆるビール」が苦手な人でも飲みやすいかもしれませんよ!
私の経験談
私がミュンヘン在住中、旅行でミュンヘンに来た方を有名なビアホールに連れて行きました。1人は「ビールが大の苦手」と言ってたのに、試しにこのヴァイスビアを勧めたら、「これなら飲める!」となんと500mlグラスを3杯も飲んでました!「もうお会計して帰りますよ!」と言ったら、「ちょっと待って!」と3杯目をグビグビ飲み干してました(笑)
アルト
デュッセルドルフを中心に作られるビール。上面発酵ですが、低度熟成されるちょっと変わった製法。ローストした麦芽を使うので色は濃い色になり、味もやや苦味があり、麦芽とホップの美味しさが出てます。地元デュッセルドルフの飲み屋では小さいグラスで出されます。「もういらない!」って意思表示しない限り、グラスが空になるとお代わりが提供されます。まるで「わんこそば」ならぬ「わんこビール」です。知らないで飲みに行ったら大変なことになりそうですね(笑)
「アルト(Alt)」はドイツ語で「古い」という意味です。
ケルシュ
デュッセルドルフの近所、ケルンを中心に作られるビール。この2つの都市は長年のライバル。当然「アルト」と「ケルシュ」も「ライバル」。アルト同様こちらも上面発酵で低温熟成させるタイプ。ただし、麦芽はローストしてない状態で使うので色は綺麗なゴールドで、ちょっとフルーティーな香りが特徴。あまりにもアルトに対するライバル意識が強くて、昔はケルンのスーパーにはアルトは置かず、デュッセルドルフのスーパーではケルシュを買えなかったという小噺があります。今はお互い買えるそうですよ(笑)毎年ケルンでは11月11日11時11分にカーニバルが開催されます。もちろんたくさんのケルシュも飲まれるようです。みなさんも11月11日のランチは是非ドイツ料理屋へGo!
ちなみに「オーデコロン」はフランス語で「ケルンの水」という意味ですが、ケルンの女性はケルシュを化粧水代わりに使ってたわけではありません(笑)
ピルス(ピルスナー)
日本人に一番馴染みが深いスタイル。というのも、日本で飲む「ビール」の大半がこのスタイルだからです。「日本人にとってのビールの概念=ピルスナー」と言っても過言ではないです。元々の発祥は19世紀のチェコという、実は歴史が浅い下面発酵ビールで、世界に60も70もビールの種類がある中の1つに過ぎない、というのは日本人ビール愛飲家には驚愕の事実かも?色は美しいゴールドですっきりした飲み口。日本だけでなく世界中に普及したスタイルであることは誰もが認める事実です。
シュヴァルツ
「本当の黒ビール」と定義出来るのは下面発酵の「シュヴァルツ(SCHWARZ=ドイツ語で「黒」)だけ。黒ければ「黒ビール」というわけではありません。白い鳥すべてが「白鳥」ではないでしょ?(笑)下面発酵でアルコール度数がそんなに高くなく(5%前後)、黒色であることが条件になります。ローストした麦芽がビターチョコのような味を作り出します。
デュンケル
シュヴァルツと同じく下面発酵の濃色ビールで、黒に満たない濃い茶色のビールがこれに当てはまります。ミュンヘンを中心に発達しましたので「ミュンヘナー・デュンケル」とも呼ばれます。
ボック(シュタルク)
アルコール度数が高い(6〜7.5%)下面発酵ビール。
さらに度数を高くした(7.5%以上)のが「ドッペルボック」(ドッペルはドイツ語で「ダブル」です)。また、醸造の過程で一度凍らせて水分を取り除いて更に度数を高くしたのが「アイスボック」です(水分はアルコールよりも早く凍結するので水分だけ取り除ける)。
ドイツでは3月頃になると「シュタルクビアフェスト」というお祭りがあり、このボックを1リットルジョッキで飲みます!ただアルコールが高いだけでなく、麦芽の味がコクとなって味を引き立てます。ゆっくり飲んで香りも楽しんでください。(一気飲み厳禁!)
その昔修道院ではビールをパン代わりに飲む事があったと書きましたが、断食の期間中には更に栄養価の高いビールとしてこのボックが飲まれたそうです。スゴイ!
メルツェン
もともと夏の間は衛生上の理由からビール醸造が禁止されていたことから、秋の収穫祭用まで保てるように少し強めに3月に仕込んだ下面発酵ビール。そして9月から10月にかけて大放出!オクトーバーフェストで提供されるビールの多くがメルツェンタイプであるのにはこういう背景があります。もちろん今では1年中メルツェンが飲めます。ちなみにメルツェンはドイツ語で「3月」という意味です。
ラオホ
ずばり「燻製ビール」です。ブナなどのチップで燻製にした麦芽を使って醸造すると、ビール自身も燻製みたいな味に仕上がります。色は濃い目。ドイツではバンベルグという町の近郊の独特のスタイルです。初めて飲む人は「カツオだし?」「めんつゆ?」と言ってビックリする人もいるかもしれません(笑)これが燻製や“いぶりがっこ”などと合わせると最高なんですよ!5回飲んでその美味しさがわかる、なんて言われてますので、1回目でビックリしても、懲りずに何度も飲んでみて下さい(笑)
ドイツビールの紹介は以上です。
ではフェスト会場でいろんな顔をしたドイツビールと出会って、
笑顔で乾杯して楽しんできて下さいね!
それではみなさん、プロースト!!!




